創作短文1篇

 少年が笑ったのは、いかにもな話であった。
 であるからして私は、いつまでも全てを諦め切れなかったのだ。
 あの笑顔が私に向けられやしないかと、道理の通らぬ願いを抱いて終ったのだ。
 けれども果たして死の床に入るまで、少年は私に笑いかけやしなかった。
 だからこそ思ったのだ。次若しその生が、ついでに私の次のそれと同じくして、転じて生まれるならば、そしてそれが同じ世ならば、少年には何ら望むまい、と。
 しかしどこかで見返りを求める心があったのだろうか。無償というには些か過剰な愛を注いでやろうか、などとも思っていて、そして何の因果か、それは現実になったのだった。

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